クイーンランド補習授業校の歴史は、昭和51年にクイーンランド大学の橘川次郎先生や内山加代子先生、三井物産等のご尽力により、ブリスベン補習授業校設立の準備が開始されたことに始まります。その後、平成6年にゴールドコースト日本語補習授業校と統合し、今日に至るまで多くの方々に支えられながら運営が続けられてまいりました。そして、2015年に校名をクイーンズランド補習授業校と改め、新たな一歩を踏み出しました。
思えば、発足から40年に渡る歴史を刻んできたことになります。その間、その時々の在校生、教員、保護者が一体となって補習校の運営に携わってきました。補習校の特徴は、まさにこの点にあります。次代を支える日本人子女を育てるために「皆で助け合っていく」という協力の精神とそれに対する人々の熱意こそが補習校の力の源であり、姿です。裏を返せば、在校生、教員、保護者の助け合いという三位一体関係が崩れると、学校としての機能を失ってしまうのが補習校です。現在、世界には205校の補習授業校があります。どの補習校もこの難しさを抱えています。補習校は、週1回だけの学校であるため専用の校舎を持っているところはほとんどありません。また、教員も授業日以外は他の仕事を持ちながら授業の準備をしています。一般の保護者も役員も日頃の安全指導やら学習指導の手伝いやら図書係やら、はたまた行事の準備やらと専任教員のように働きます。もちろん、すべてボランティアです。幸いなことに、これらの人々の奉仕の精神は、多くの共感を生み、地域日本人社会の中に補習校を取り巻く温かな空間を形成しています。子供たちも大人たちのそのような精神に応えようと一生懸命勉強しています。
補習校は、日本の学校教育法、学校教育法施行規則、文部科学省学習指導要領に基づいて<日本人にふさわしい教育>を提供する在外教育施設です。同等にはできないにせよ、学習指導はもとより、生徒指導や行事などの特別活動も日本国内の学校に準じて行われます。特に、学習指導においては、検定教科書を用いて、文部科学省が補習校のために作成した指導計画を参考に、日本国内の学校とほぼ同じ進度で進められます。行事についても、日本的な入学式や卒業式はもちろん、唱歌を歌ったり、こどもの日や七夕などの文化を学ぶ集会を始め、日本的な運動会や文化祭などがあります。本校の場合、運動会と文化祭は、ゴールドコースト校の子どもたちもブリスベン校の子どもたちもとても楽しみにしている年1回の盛大な学校行事です。どちらも日本を体感できるだけでなく、学ぶものがある大切な行事です。現地校での勉強だけでも大変な中を、準備をして土曜日に補習校に通うことは辛いことでしょう。しかし、子どもたちは、平日に日本の子どもたちがする1週間分の学習を家庭でお母さんと担任に支えられながら、よくこなしています。
皆の協力という宝を大切にし、これからも補習校の子供たちを皆で温かく見守っていきましょう。
第8代校長 清村幸一